ある日、銭湯の喫煙所でやたらデカい声で談笑してる2人組がいた。力仕事をしてる系の先輩と後輩って感じ。
その喫煙所には、他にも若い子3人組とぼくを含めておじさん2〜3人とそこそこ人はいたんだけど、とにかくその先輩の声は耳障りなほどデカかった。
お酒も入ってたからだとは思うけど、問題は声の大きさよりも話の内容である。
簡単に言えば、武勇伝を語っていた。
大人やのに、、、とぼくは思ったけど、まぁ、そんな人もいるだろう。後輩乙。
話の詳しい流れはよく分からなかったけど、多分こんな感じだ。
親か兄かが社長を務める会社で彼も働いてるようで、最近女性に入れ込んでた彼は、仕事でヘマをしたのか、ヘマが続いてたのか、とにかく兄からダメ出しされたらしい。
その事で腹を立てて、実の兄をボコボコにしたった、ガッハッハってことを後輩に自慢気に語っていた。
しかも、その暴力を正当化するように、「あいつ(兄)はオレが(仕事で)苦しんでる時には何も助けてくれず、今さら偉そうに言って来たから、どうのこうの」
「オレらは人間なんだから、力でわからせないと伝わらないこともあるから、どうのこうの」
「オレはお前(後輩)が困ってそうだったら、ちゃんと声かけて、助けてあげるよ。だから、どうのこうの」
ぼくには彼が何を言いたいのかは分からなかったけれど、ようはオレはケンカ強いんだから逆らうんじゃねぇぞってことを人情に熱い男として語りたかったんだろう。
面白かったのは、ぼくが喫煙所を出た後、一緒に入ってた若い3人組が「あんな大人にはなりたくないな」と話してたことだ。
さて、なんでこんな話をしてるのかと言うと、件の彼の話ってのは、マーケティングの観点で見ると、色々と面白いと思ったからだ。
まず、人は自分が正しいと信じて生きているってこと。そして、それを認めさせたいという承認欲求からその話をしていること。ただ、文句を言わない後輩にしてるところは、自身の名誉と地位を守ろうとしているから、世間との乖離は理解しているんだろうと思われる。
つまり、自分の行いを自分の中でも正当化するために、その話をしたわけだ。聞かされてる後輩はたまったもんではなかっただろう。
あえて言うまでもないけれど、暴力は正しくはない。きっと、彼は兄にズバズバと図星をつかれたんだろう。そこに言い返せるだけの余地がないほどに。
これはこれで良くない。人は、逃げ場がないほどに理詰めされると、爆発するもんだ。だから、兄弟喧嘩で終わってれば良かったんだけど、それを公共の場で言うもんだから、要らぬ分析をされてしまうことにもなる。
人間は感情で動くんだけど、それを論理的であるかのように振る舞えるからこそ人間なんだと思う。
一方で、感情でしか動けないのは哺乳類などの動物だ。
だから、一方的な暴力などは正当化しようがない。動物的行動に理由などない。言い返せないから力で黙らせただけだ。
ただ、ぼくたちが覚えておかなければいけないことは、「感情」がどれだけ強い動機になるかってことだ。
しかも、その感情に任せた行動は、必ず後から理屈を付けないと、人は自分を人間たらしめられないってことも覚えておいて損はない。
あなたは最近、どんな感情が原因で行動を起こしただろうか?そこにどんな理由を後付けしているだろうか?
人間観察はマーケターとしての目を養えるので、あなたもぜひやってみると良い。