そんな僕はやがて幼稚園に入ることになる。
入る予定はなかったらしいんだけど、母が周りから入れた方が良いと勧められたことで、他の子たちよりも1ヶ月か2ヶ月か遅れて入ることなった。
今では当たり前に入れるけど、当時は当たり前になりだした頃なのかも知れない。
だけど、入った幼稚園は僕に合わなかった。
そもそも、友だちがそこにはいない。さらに、お寺に併設されていた幼稚園だったので、園の横には墓地もあったし、そもそも園自体が相当古い建物で、寺子屋さながらの雰囲気だった。
電気もなんというか、引き合いに出して悪いけど、昔っからやってるそろばん小屋みたいな感じだったように記憶している。
で、僕はどうしても気乗りしなかったようで、母に連れられて行く度に大泣きしてたらしい。
子どもを幼稚園とか保育園に入れるのは確かに学びもあるし、親としても少し気が楽にはなるんだけど、泣かれると本当に後ろ髪引かれる思いで、心苦しいものだ。
子どもとしても引き裂かれるような感じもするし、「ボク(ワタシ)は要らないの?」と心の傷を負わせてしまうこともあるかも知れない。
子どもにとって何が正しいのかなんて分からないけれど、泣いて親を追いかける子どもは本当に可哀想になる。
で、僕もそんな子どもだったようだ。
ただ、先ほど書いたように、僕は子どもなりに「理由」を持って「あそこの幼稚園は嫌だ」と思っていたようだ。
結局、転園を決めてくれたんだけど、そこには共に虫取りをしていた友だちもおり、ウサギなども飼っていて、いたく気に入ってたとか。
「ここの幼稚園に来れて良かった」と母に告げたと聞いたことがある。
つまり、子どもはどこまでも自分に素直なのだ。純粋故に、嫌だと泣くし、良ければ笑う。
残念ながら、幼稚園での思い出なんぞもない。
件の友だちの他にも友だちができて、よく3人で遊んでたし、お互いの家に行ったり来たりもしていた。だけど、僕だけ小学校は学区が違ったので、以来、彼らとは会っていない。
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