あなたにも人生のちょっとした転機なんてのは、いくつかあるだろうけど、まさか誰かの机の横を通ったことで人生の変化が訪れたことはあるまい。
何があったかと言うと、横を通り過ぎる時に、ふと彼が書いてる何かを目にしたのだ。いや、正しくは、描いているだ。
衝撃だった。
彼が描いていたのは、オリジナルのキャラクターだったのだが、それが上手かった。
ボクは小学校4年生くらいから、マンガを描き始めていたし、たくさん練習してきたし、それなりに上手いと思っていた。だから、どれくらい上手いかはもちろん分かる。そして、Aの画にはセンスもあった。
そこから、Aと仲良くなり、いつからか2人でひとつのマンガを描くことになった。
と言っても、原作作画ではなく、W作画。
これは、素人の遊びやからできることやけど、ほんと楽しかった。
やがて彼は、その道の専門学校へ行き、イラストレーターになった。
そんな彼が小説の挿絵を担当することになったと聞いたときは、嬉しかった。
それが、狼と香辛料。
彼の名は文倉十。(もちろんペンネーム)
そして、狼と香辛料は、アニメ化される。
キャラは、ほぼ彼の挿絵のままに。
そして、EDでは描き下ろしやった。
元相方の小説やアニメなのだから、全部観た。
と言いたいところだけど、ボクは全部観てなかった。
実は、ボクは彼の画のセンスも好きだけど、彼の考えるストーリーも好きだった。
2人で描いてたときは、ほとんどボクのストーリーに合わせてもらってたんだけど、彼は1人でもマンガを描いていたから、その話などが好きだった。
だから、できれば彼の物語で彼のキャラクターが動くのであれば、ボクも最後まで観ただろう。
だけど、今日、ふとプライムのオススメで出てきたので、なんとなく観てみようと思ったわけだ。
彼の原画とアニメでは、もちろん違う。
文倉十の画は、ボクの知っている文倉十の画は着色されてなかったんだけれど、彼のイラストはその繊細な色味が良い。
だから、その点もやっぱり違和感があるんだけれど、ただ思ってたより話も面白かった。
ほぼ商売の話なんだけど、それが新鮮で面白い。
これは小説やと難しすぎて理解できひんかも、、、やからかつては読むのをやめたんかも知れんな。
まぁ、何にしても、当時のボクには素直に認めたくないなにかもあったんだろう。
ボクは画の道を親父に「才能がない」と言われて諦めたから。
そう考えると、今になって文倉のことを羨ましいと思わなくなったのかも知れない。
今なら、素直におめでとうと、心から言えるのだろう。
とても遅くなったけれど、心からの賛辞を。
少なくとも、キミの画が動くという「夢」を現実にしてくれて、ありがとう!
だが、キミには早くマンガを描いて欲しい。
ボクは、キミの描く物語とその物語で動くキミのキャラクターが見たい。